星組『ロミオとジュリエット』初演
宝塚ではもう4回再演していて、好きな月組でも雪組でもやっている演目だけれど、役のハマり方とバランスという点では、やはりと言うべきか、星組の初演がいちばんだと思っております。
若々しくはつらつした魅力のちえさん、気怠げで翳の濃いかなめさん、ヒロインになるために生まれてきたようなねねちゃん、おどける紅さん、ロミオを見守ってきたとよこさん。
出逢ったばかりの新鮮なちえねねと、ねねちゃんを見守ってきたれみちゃん。
輸入ミュージカルのはずなのに、当時の星組に当て書きしたような登場人物たち。
そして、ロミオとジュリエットは何より、「関係性の演目」なのだ。
エリザベートと比較するとわかりやすい。
エリザベートはキャラクター各自が「個」「我」「欲」を主張しぶつけ合い、すれ違う、「ディスコミュニケーションの演目」と言って良い。
なので、本舞台を共にしたことがないメンバーを集めての「ガラ・コンサート」の形式が成り立つのだと思っている。
それに対してロミオとジュリエットは、モンタギューチームの長年に渡る気心の知れた雰囲気と、ティボルト→ジュリエットの、これまた長きに渡る恋慕・情念が滲んでいなければ成立しない。
その彼らの十数年が、物語にして4日間、舞台にして2時間半の間に大きく「狂う」のが醍醐味なのだから。
私にとって、その「十数年」を最もはっきり感じさせるのが、この星組初演のロミオとジュリエットだ。
日常での「あだ名の存在」「本名の存在」の関係性が舞台に表れてしまったり、観る側がそれを重ねてしまうのは、宝塚の良い所であり悪い所でもあると思っているんだけれど、ちえねね政権下の星組は、それを上手いこと良い方に作用させる力が強かったように思う。
それが最もよく表れている一つが、この演目なのではないかと思う。