ヅカ式宝塚鑑賞日記

小並感千本ノック

花組『スカウト』

これも好きでたぶん6〜7回は見てるんだけど、今夜初めて「コミュニケーションの重要性」がテーマだったことに気づきました……。

いつも演出・音楽のカッコよさとか、コメディシーンの面白さとか、まっつ一花の可愛さとかに気を取られてしまっていたんだよなぁ。

「愛し合える人がいれば
信じ合える友がいれば
恐れはしない」
まさにこのテーマ曲の通りなのだ。

きっかけになったのは、ショーンがクラブダンサー仲間たちに悪鬼対策の協力をお願いしにいくところ。
悪鬼は目に見えないが、とりつかれるとネガティヴな思考や希死念慮に捕らわれる。
見えない相手にどう対策を取ればいいのか、とあるダンサーが問うと、別のダンサーが、意識してお互いの様子に注意すれば良い、ちょっとしたことでもどんどん相談しよう、と答えたのだ。

この作品はオウム真理教を巡る一連の事件があった時期に上演され、社会に漂っていた不安感を描いたと評されている。
社会に漂う目に見えない不安感に負けないようにするには、日頃からお互いに目配り気配りをし、コミュニケーションを欠かすことだ、と正塚先生は考え、脚本を書いたのではなかろうか。

「コミュニケーション」を切り口にすると、台詞の一つ一つの厚さがわかる。
情緒不安定的な言動・行動を続けていたサーシャが、ついに昏睡状態に陥ってしまったときのショーンの台詞。

「俺も君の正気を疑っていた。
あれは君が必死に戦っていた証だったんだ」

ショーンはサーシャの言動・行動を理解しようとすることを怠り、ディスコミュニケーションに陥ったために、サーシャを喪ってしまった。
これもまた、メンタル面で弱った相手への対応について考えさせられる。