ヅカ式宝塚鑑賞日記

小並感千本ノック

花組『LAST DANCE』

いわゆる「ザ・正塚作品」で、全体的に
「あーあーあるある正塚作品によくあるアレね!」
って感じなのだが、ヤン様の翳のありまくるカッコよさをストレートに活かすには、こういうヒネりなしのザ・ハードボイルド作品が良いのかも。
静かに淡々と、だけどじわじわと危機が迫ってくるような、本当に洋画のような雰囲気で。
「へい、新鮮なヤンのカッコよさ、いっちょお待ち!」
みたいな感じ。バウだし。

余談だけど、リアル俳優でもカッコよく見えるのってやっぱりハードボイルドだと思うし、宝塚でももうちょっとハードボイルド作品やれば良いのになって私は思うのだけど(それはもちろんラブロマンスが最大手であるという前提においてだけど)、なかなか他にやる人が出てこないね。
正塚先生がやっちゃってるからか、そうか……。

心象描写でどんなコロスにも負けないキレッキレのダンス踊ってるヤン様が
「ダンス踊ったことないんだ」
はかなり面白いと思うんだけど、出会いの場面と最後の場面、それぞれの
「揺れてるだけでいい」
にはドキドキしちゃいますね。

これまた余談だけど、正塚先生は「女が男に踊り方を教える」ってシチュエーションがお好きなのだろうか。
何かこう、固執めいたものを感じるのだが。どうなのでしょう。

ラストシーンがまたね、退団が発表されてるトップスターの最後のバウでそれやっちゃうか、っていうニクさ。
「列車を降りるように、好きな時代、好きな場所で留まれたら良いのに」
という台詞は、まさに贔屓を見送らんとするファンの心情。
それでも背中で語りながら去っていく男(役)。

そうなのだ、宝塚の男役スターは、死なないが去っていく。
ハードボイルド作品の主人公たちと同じように。
宝塚の男役とハードボイルド作品って、そういうところも含めてやっぱり愛称良いんではないの。