ヅカ式宝塚鑑賞日記

小並感千本ノック

月組『明日への指針 −センチュリー号の航海日誌−』 

限られた尺の中でミュージカルを完結させる編集手腕。
決して慌ただしくなく、かといってエピソードを詰め込みすぎている訳でもない。
スター路線の出演者にはそれぞれ見せ場があった。

やはりダーイシはすごい。
そういえば、ダーイシの作品で緩急が悪かったり話が回収できていない作品を知らない。
恐らく、宝塚の演出家の中でもかなり知的な、的確な計算をして作品を創れるタイプの演出家なのだろうと思う。

船旅という題材のチョイスにうならされる。
時間も空間も限られているから、余計な箇所が拡がりすぎない。
船、航海というモチーフは、100年目の新しいスタート、という記念公演の趣旨ともマッチする。
短時間だから全員を出演させなくても良いですよと言われたそうだけど、初舞台生含め全員を出演させたというのにも感動した。

音楽も良かったし、脚本もイキイキしていた。
ダーイシ脚本は(たまに品がないが)人物と台詞にリアリティがあって親しみやすい。
小品である分、それらの魅力が見えやすかったように思う。

ライトな雰囲気が、明るくパッとした、まさきさん中心の月組に合っていた。
初期の宝塚はこういう、フラッと来てカラッと楽しめるような、気楽な娯楽だったんだろうな……とも思う。
映画より安かったらしいですからね……。
花詩集も明日への指針も、そういう温故知新の部分がある演目で、100周年記念公演にふさわしかったと私は思っている。

ところでダーイシはクズ男をキュートに描くのが上手いね。