花組『アデュー・マルセイユ』
イケコのオリジナル作品らしい、わかりやすい勧善懲悪だなぁw
最後、どんでん返ししたつもりだろうけど、あまりにもベタなどんでん返し方で、
「イケコの発想可愛いなw」
と思ってしまったよ。
しかし何と言ってもオサさんを堪能できるのがたまらない。
男役の彼女に恐らく一番似合う服装であるトレンチコート姿で街に降り立つオサさん。
叙情的なメロディと歌詞のテーマ曲。
それを歌い上げる絹のような声には思わず聴き惚れてしまいます。
OPのオサさんの歌声で、作品の世界観が創りあげられていると言っても過言ではないほど。
OPの歌詞になっているのは「ボンソワール・マルセイユ」つまり「こんばんはマルセイユ」。
タイトルのアデュー・マルセイユが「さようならマルセイユ」なので、それと対になっています。これちょっとニクいと思った。
曲調はノスタルジック。
その曲調がそのまま作品の世界観であり、テーマでもあります。
そう、これはマルセイユ出身の主人公・ジェラールの、過去を巡る物語。
街に戻ってきたジェラールは、少年時代に自分を陥れ、少年院に入れたギャングの企みを暴いて、見事に復讐を果たします。
(このギャング側の面々ってのが、夏美よう氏・星原美沙緒氏・黒塗り未涼ぱいせんに、さわやかハンサム青年議員の皮をかぶった悪徳えりたんっていう錚々たる面子なのがたまらない。)
一方で、女性の権利拡大を主張する婦人会のリーダー・マリアンヌとも心を通わせます。
保守的な女性に悪し様に言われ(その通り、フェミの敵は女なのだ……)落ち込むマリアンヌに
「僕の母は女手一つで僕を育てた。母が生きていたら君たちの活動を応援していただろう」
と励ましの言葉を掛けるジェラール。
守る男と守られる女ではなく、それぞれに強く戦う人間同士として、2人は惹かれはじめます。
オリオンとアルテミスのロマンスに、自分たちを重ねる2人。
マリアンヌはジェラールの母親が勤めていた工場の社長令嬢でもあり、工場跡を婦人会の活動場所にしています。
さらに少女時代のマリアンヌは、亡き父から少年ジェラールの評判を聞いていました。
過去と「今」が二重・三重につながります。
と、物語の世界の作り方や、トップコンビの恋愛関係の形はとてもとても素敵なのですが、いかんせんオチが呆気無さすぎる。
正塚先生作品みたいにややこしすぎるのもアレですが、あまりにも水戸黄門的というかベタで、最後だけ子どもが考えたのかな? となってしまう。
そこまでの完成度が高いだけに違和感がありまくりだし、残念。
あと、最後、ジェラールはマリアンヌを置いてマルセイユを去るんですが、その理由もいまいち説得力が無い。
ジェラールはアメリカで、マリアンヌはこの街でやることがある、というのは確かにそりゃそーだなんですが、いろいろやりようはあるじゃん……遠恋とか、ねぇ……?
と、釈然としない部分はありつつも、これまたオサさんの歌うエンディングテーマが美しくて、まぁ良いかって気持ちになってしまいます。
最初と最後に同じ、大階段を使った客船のセットが出てきて、始まりと終わりが呼応しているのも良いですね。
ところで今回も、えらいきれいな女役さんだけど妙に声が低いなと思ったらみわっちでした。
コマちゃんといいみわっちといい、イケコは特定の男役に関して、一度そう見えるとずっと路線娘役だと思い込んでしまうのかなぁ。