雪組『二人だけの戦場』
ロマンチック! ですぞ!!
正塚先生だしタイトルに戦場って入ってるし、んな訳ないじゃーんって思う? 思うでしょ?
実際、雰囲気的にも照明的にも明るいシーンが無くて、基本的にずっと暗いし重いし、話難しいし、正直言って睡魔に襲われることも多々! あった!
だけどこれからこれ観る人に言いたい。
ラストが! 素敵だから!! ものすごく!!!
前述したけど、話は難しい(爆)。
観終わった後、『男役の行方』でカンニングしました。
(基本的に昔の正塚先生作品は観た後これで確認をする……。)
ボスニア内戦をモチーフにしているんですよね。
『演出家列伝』で正塚先生本人が言っていました。
石井「正塚さんが作品を作る時、どういうことがきっかけ・アイデアになるんですか?」正塚「話? 物語という意味ですか? ……時事ネタですかね(笑)。『二人だけの戦場』はですね、丁度ボスニア・ヘルツェゴビナで内戦やってる頃だし。」(演出家列伝 #7)
— 正塚先生bot (@mstk_bot) 2015年12月17日
とうこさん演じる作家のインタビューに答える、終身刑者の一路さん。
自分の上官殺害の罪に対する判決が決まったときの裁判を回想します。
回想の中で行われる証言が、劇中劇のような形で演じられます。
民族独立の動きが高まる地域に、新任士官の一路さんとイシさんが着任します。
そこは、一路さんが士官学校卒業の夜に街で出会った異民族の娘・おハナ様の故郷でもありました。
(おハナ様と兄のたかこさんがエキゾチックで情熱的な踊りを踊っているところに居合わせるんです、たかこさんの手脚がめっちゃ長くて見応えすごい)
再会し、想いを寄せ合うようになる2人。
ですが独立の気運は日増しに高まり、2人が着任している基地も取り囲まれます。
攻撃すべきだとする副司令官とそれを制止する司令官とが言い争いになり、あわや発砲沙汰になるというところで、一路さんは副司令官を射殺します。
基地は撤退、おハナ様たちの民族の独立は成功、流血は最小限に抑えられましたが、一路さんとおハナ様は生き別れになり、一路さんは終身刑に処されます。
(本来上官殺害は死刑なんですが、一部始終を知っていたイシさんの証言により、軽減されての終身刑です。ちゃんと男の友情も入ってるんですよ★)
全てを語り終え、場面は一路さんがとうこさんに過去を語る「現在」へ。
「全ては虚しかった」
と諦観する一路さんのもとに、イシさんが現れます。
おハナ様たちの国と一路さんたちの国の国交が正常化。
恩赦で一路さんも放免。
そしてイシさんの隣には、おハナ様。
ずっと会いたかった、と抱きしめあう2人。
民族の違いも、引かれた国境も、離れていた時間も、全てを超えて。
ガチで泣いたし今これ書いてまた泣いてますからね私!
やっぱり正塚作品はラブロマンス、なのだ。
人の世に生きている限り、生活は政治とも国家とも切り離すことはできなくて、個人の意志ではどうしようもない力によって引き裂かれるかもしれないけれど、心そして愛は自由なのだ、という、初期作から近年の作品に到るまで揺るがないメッセージ。
「生きてさえいるのなら…この手に抱きしめるその時が巡るまで」ってのは『マリポーサの花』ですけれど、そういえばあれも政治的なゴタゴタで生き別れになりつつも、愛し合い続ける『二人だけの戦場』の物語だ。
『二人だけの戦場』は「この手に抱きしめるその時」が巡ってきた『マリポーサの花』とも言えるかもしれぬ。
余談だけど、劇中の衣装でのフィナーレがソークールです。
椅子プレイ炸裂しまくりだぞ。
そしてチハル兄貴はやっぱりいいな!!!