ヅカ式宝塚鑑賞日記

小並感千本ノック

雪組『ささら笹舟-明智光秀の光と影-』

3連続谷先生作品になってしまいましたが、偶然ですから!!

すごく余談だけど、月船さらら氏のお名前とすごく親和性のあるタイトルで、月組公演だと勘違いしていた。すみません。

 

かしちゃんの主演バウです!

貴公子、本当に美しいですね~。

西洋ものでも美しいけど、日本ものだとより美しさ、気品が際立つタイプだと思う。

 

そしてお芝居が既にしっかりしている……当時研8とかのはずなのに。

バウ初主演だったのか、堂々としたものだ……さすが雪の御曹司ですね……。

新公主演4回、うち本役は高嶺ふぶきさんが1回、あと3回はイシさんとか、英才教育感半端ない……。

 

明智光秀の両極端な人柄は、実は本人と影武者による行動の違いで生じたギャップなんじゃないか……? という説を膨らませた脚本。

(明智光秀には影武者がおり、実は死んでいなかったという仮説は谷先生オリジナルではなく、一般に言われているもののようです)

 

双子だとかそっくりさんだとか、宝塚はたまに主演に「一人二役」をさせる無茶をするんだけど、今まで見た中ではこの作品が一番しらけない演出をしてたなぁ。

光秀本人と影武者・幸四郎が対話するシーンは、別の生徒さん(たぶん全部音月桂氏)が後ろ姿で「もう一人」を演じていたからかもしれぬ。(声はかしげ氏の録音。)

なのでそこによる残念感はなかったぞ、と。

 

しかしやっぱり脚本にはなんか無茶があるというか、スッキリしないというか、描き込みが足りないところがあってだな……。

 

だんだん「光」である光秀と、「影」である幸四郎が同化していくんです。

なんだか特別な絆のようなものが生まれて、最後には「お互いあってのお互い」「互いがいなければ存在している意味が無い」みたいな、一心同体、一蓮托生みたいなコンビになるんですよ。

けどその過程がほとんど描かれていないんですよね。

ラストシーンでいきなり本人たちがそんなこと言い出して、観客も臣下たちも「エッ!?」ってポカーンしてしまうという。

 

一応ヒロインはまひる氏演じる光秀の妻・煕子なんですが(彼女も当時推されまくってたんですね~、そしてやはり上手い!)、ラブなシーンも取ってつけた感じ。

夫と同じ顔で、だけど夫よりも優しい幸四郎に恋してしまうんですな。

しかし話の大きな流れは、やたら暴君に描かれているチャルさん信長が作ってしまっており、光秀と信長の構図にあまり関わりの無い幸四郎のロマンスは、ちょろっと申し訳程度にしか描かれない。

いやいやラブ描こうよ! 宝塚なんだからさー!

 

そう、チャルユーマヤという、特濃専科御三家が揃ってしまっていて(いや、チャルさんはこの頃まだ雪組組長なのかな? わからん)、その3人とかしちゃんくらいしか印象に残らないのだよなーーーー。

脚本上、チャルさん信長が一番目立つ作りになってしまっていて(センターで台詞(しかも長い)を言う回数がたぶん一番多いしインパクトある)、光秀の物語というより「ブラック企業の上司・信長」の物語という印象が残るのだよなぁ~。

最後、帰蝶との「泣かせるやりとり」も入ってるしね……そこだけ取り出せば良いシーンなんだけど、光秀の物語として見たときは余計なんだよ!!!

 

別ジャンルだけど『真田丸』はその点見事だよね、「主役の視点」がブレずに中心に描かれていて、主役の行動範囲外の出来事はナレーションで済まされる。

 

とまぁ、フラストレーション残る作品ではあったが、若き日のかしちゃんは良い意味で若さを感じさせない実力で、そこは観ていてまったくストレスや不安が無かった……。

まひる氏も、残念な脚本のせいで出番が少なかったけど、武将の妻らしい堂に入った落ち着きがあって素晴らしかったよ……。