月組『NOBUNAGA<信長> -下天の夢-』
お芝居の『NOBUNAGA』とショーの『FOREVER LOVE!!』は、それぞれが異なる角度から「トップスター・龍真咲」を表現した2作になっていて、こんなにじっくり「龍真咲」を堪能させてもらって、とっても贅沢だな! という気持ちになる。
NOBUNAGAの幕開けは敦盛。
白装束は、やはり死を表しているのだろうか。
卒業の卒は死の意味。
タカラジェンヌ、トップスターとしての生活を終えるまさおちゃんを送り出す作品であることを、初めに宣言しているのだろうか。
いつもより浅黒いメイクにヒゲのまさおちゃんカッコいいです。
黒さ・男くささはルキーニくらいの度合かな?
フワフワキラキラ妖精さんみたいな役を演じたこともあったけど、卒業公演でこんなに生命力と男性ホルモン強めなお役を演じるの、面白いしまさおちゃんっぽいなって思わせますね。
一代記ものを1幕ものでやるときにありがちな駆け足感を、この作品も避けられずにいて、おまけに回想やら何やらで時系列が10年後、15年後って飛ぶものだから、なかなかについていくのに頭が忙しい。
けれど、そのスピード感が、信長の生き急いでいる感と、まさおちゃんの駆け抜けた感を表現する結果になっているような気がしなくもない。うがちすぎかな?
戦わずにはいられない、独りで走り、進み続けるしかない信長の業めいた宿命が繰り返し語られる。
(真ん中の人の持ち味も、相手役との関係性も全然違うけど、あさこさんのA-"R"ex!にそこんとこが少し似ている。)
冒頭に銀橋で歌われるそんな内容の歌詞に、思わず涙が出た。
信長はこれまで、いろいろなメディアでいろいろな描き方をされてきた人物だけど、この作品の信長はかなり龍真咲というタカラジェンヌに寄せて描かれている。
まさおちゃんが今までしてきたように、独りでいろんなものを背負って、いろんなものを引き受けて、独りで去っていってしまう。
背負う「いろんなもの」には、これまで殺してきた相手、蹴落としてきた相手のことも含まれている。
タカラジェンヌの世界は、競争社会だ。
共に演じる仲間であっても、誰かの出番が増えれば、その分誰かの出番が減る。
龍真咲というタカラジェンヌは、早くから抜擢されてきた華々しい経歴を持つ。
その影で、悔しい思い、苦々しい思いをさせてきた相手もいたことだろう。
彼女たちの手放した「夢」を背負い、その分も輝くこと。
そういう覚悟や使命感を龍真咲は感じさせるし、そういうものを感じさせる信長だった。
信長を裏切ろうとした武将たちが、その背負うものの大きさ、覚悟とスターオーラ(と言って差し支えないと思う)にひれ伏し、恭順を示すシーンは、作品のハイライトになっている。
信長が背負ってきたものを引き受ける覚悟があるのなら、倒せば良い。
龍真咲は、奇抜なファッション、強烈な発言で、破天荒なタカラジェンヌとも評されてきた。
信長の斬新な衣装や、居室の異国情緒とケレン味溢れる調度とが、龍真咲のその側面を表しているのだろう。
これゆえ、龍真咲は、彼女をよく知らない宝塚ファンからは「うつけ者」のように扱われることが多かった。
しかし、ちょっと彼女に興味を持ち、その努力家で、必死で健気でいじらしい部分、そしてトップスターとしての責任感、使命感を知ると、ひれ伏してしまうのだ。
あのシーンの武将たちのように。
演者の個性、組の中でのポジショニングに「寄せて」描かれているのは、信長だけではない。
妻の帰蝶。
ちゃぴの持ち味を活かして、とにかく凛々しく、強い!
いかんせんこの作品の信長さまは独りで駆けていってしまう方だし、帰蝶にとっては故郷の美濃を滅ぼした仇でもあるし、あまりベタベタする夫婦としてのシーンは無い。
けど、繰り返し若かりし日に2人で野掛けしたことを思い出すところは恋する娘役だし、
「信長は私の獲物です!」
って言いつつ光秀・秀吉から信長をかばうシーンは「まさおちゃんの相手役」としてではなく、一人のスターとして並び立つ輝きを放つようになった「愛希れいか」の役にふさわしい。
かちゃるりというスター路線の2人が演じる光秀・秀吉の解釈も、
「信長が背負ってきたものを引き受ける覚悟ができた」
という前向きなものになっている。
明智光秀好きの人には嬉しいんじゃないかなぁというのは友人の言。
次期トップスターとなるたまきさん演じるロルテスが、諸武将たちと共に恭順なワンコと化してしまったのは笑ってしまったけど、彼が贈った船で海外逃亡する信長(実際そういう説もあるそうですね)というのは胸熱だったなぁ。
タカラジェンヌとして「死ぬ」けど(冒頭の敦盛)、まさおちゃんという「人」は、外の世界に船出するのだよなぁ。
うんー、「龍真咲(とその周りの組子たち)」にリンクさせようとするあまり、脚本としてはかなりちらかってしまっているけれど、大野先生のまさおちゃんへの愛とリスペクトをたくさん感じる作品でした。
これぞサヨナラ公演! という感じの。
宙組『宙FANTASISTA!!』
まともに全編通して観るの初めてなんだよな、たぶん……。
うわさに聞く「美しいタカラジェンヌがふわふわの白いカツラを付けて踊り狂っている」OP、目で見ると圧倒されるな……。
その中でもっともきょとんとピュアな顔をしてきらきらしてるタニさんを見て、このショーはこの主演者が演出家に作らせた作品なのだ、というのをしみじみと感じた。
真ん中の人の雰囲気が作品を作る例の、最もわかりやすいものなのでは。
◆月
タニさんの逆立ちカツラ何ごとwwww
ロックモチーフつけまくりのお衣装に、ディスコチューン。
そして燕尾に黄色いウサしっぽ付けた路線男役たち……。
◆火星
ぴったりした素材のお衣装で腕の細さがわかりやすいからか、ともちんが女に見えるという事案!
ウメちゃんは黒曜石のように美しくしなやかな娘役だなぁ。
◆水星(?)
恒様っぽい音楽すげー好み
大介先生、メリの場面もちゃんと作れるんじゃん!
ものすごくきれいよ……まゆさんの顔の圧がちょっと強すぎるけど……w
◆木星
ウメちゃんが出てきて曲が「ジュピター」に変わる。
娘役さんたちがどピンクドレスなんだけど、タニさんのお衣装のライトグレーと相性が良くて、シーン全体は上品。
今まで意識したことなかったけど、タニさんとかいちゃんって舞台化粧顔少し似てる? やっぱり受け継がれるものってあるのかしら。
◆金星
トリプルタワーのド迫力輪っかドレス、これは観たことある!
そのまま中詰?へ。
打ち込み系の曲に割と正統派の衣装、大介先生こういうの好きよねw
ちょっとだけタニウメのデュエダン。
伊達男と伊達女のぶつかり合い! って感じ。
やっぱりコムまーと全然雰囲気違うなぁ~。
みーちー大のでかいダルマは強烈(⌒▽⌒)
金髪ボブかつらに変えたウメちゃん、トットてれびの満島ひかりさんのようだわ
◆土星(?)
出た! アフリカ風のやつ
ただし音楽は打ち込み系恒様風のやつで、好み←
筆頭はすっしー!
なんとセンターでスポット浴びてのソロダンスもあります……。
一度死んでよみがえったタニさん、黒ベロアのお衣装+高い三重の襟+金髪長髪かつらで、なんかクリムトの絵画の人みたいになってるな……。
本当この人も顔面偏差値が高すぎて振りきれちゃってて世界を上手く認識できなくなる系の美形……。
◆フィナーレ
「真の王、空の太陽となるのです!」は就任お祝いコメントかな。
男役群舞の曲、すごく好きなやつなのに題名知らない&他にどこで使われてたか思い出せない……悔しい……。
よく言われることだけど、ウメちゃんはかつらとヘアアクセサリーのセンスが抜群に良いなぁ。
デュエダンの後頭部ティアラみたいなん、これも自分で作ってるのかな……。
みっ様とたっちんのWエトワール、めっちゃ贅沢!
この時代の宙組って本当粒ぞろい……。
雪組『華麗なる千拍子2002』コムまー全ツ
◆OP
「夢を売る人」やはり名曲……。
宝塚の曲の中で一番好きかもしれん。
「お聴きよジャズバンド普段着のままで」
こんな素敵な曲あったっけ……?
まーちゃんも出てきてコムまー2人でダンダダ可愛い~~
◆ロンドン
白のストライプスーツのかしげしゃん素敵……。
こういうギャングっぽいのもイケる人なんだ……。
ハマコさんと奪い合いになる女が五峰姐さんってのがまた奮っているな
美穂姐さんが着てるワンピ、マイドリであゆっちが街角のシーンで着てたやつだ!
宝塚って物持ち良いなぁ!
◆マタドール
まーちゃんの歌声は澄んで可憐なだけでなく、哀愁を帯びていてすごいなぁ。
くるくる可憐に回って寄り添うの、花娘ならではって感じする。
後ろで十字架が赤い布(黒の薔薇柄!)引っ掛けてるセットがお洒落。
舞台上の人数が減ると共に布は取り払われて、光る十字架だけになって、場面に緊張感が生まれるのだ。
ブルーベリーの男もドラゴンフルーツの男もいなかったんや……ってならない?
髪おっ立ててラテン袖のお衣装着てるかしちゃんが新鮮です。
コムさんのパイナップルの女王もフィリピンのニューハーフショーだな……w
かなめさんくらいじゃねーか、ちゃんとオンナなのww
コムまーが2人きりで踊ると、場面が一気にロマンチックになるなぁ。
2人とも力があるからなんだろうなぁ。
トップ様おん自らロケットボーイ!
このときのロケットのお衣装は黄色だったんだな(宙組のアム99は白だった)。
◆ジャズの拍子をたずねて
出た、アフリカ! もしかしてジャズ出すときアフリカまでさかのぼるのって伝統芸能なのか。
どんでん返しの壁からスーツの紳士とドレスの娘役がゾロゾロ出てくる演出は緊張感があってカッコいいですね。
こんなシーンもあったかしら。どこが書きおろしでどこが初演から引き継がれた場面なのかわからんなぁ
◆フィナーレ
体感時間10分だわ……。
フィナーレはパリがテーマなのかな。
まーちゃんが歌う曲(サ・セ・ラムール?)
「好きなあなたにはまだ手が出ない」ってすごい歌詞だな
男役群舞にまーちゃんが入ってきて真ん中でデュエダン踊った! と思ったら、本当に2人きりのデュエダンもちゃんとある! 豪華!!
かしちって結構暑苦しいオラオララテンもイケる方なんですね?
パリレビュー風のお衣装着たらレビューの擬人化みたいな甘いルックスだし、ほんと……かえすがえすも惜しいスターさんを……。
美穂姐さまのエトワール、真打ち登場感ヤバいね!
美穂姐って専科生になってからエトワールやってたっけか?
さすがになさそうと思うが、どうだろうなぁ。やらせたくなっちゃうからなぁ。
雪組『再会』コムまー全ツ
銀の狼が05年、これが02年なので、続けて観るとかなり違う。
3年て長くない月日だと思うんだけど、こんなに演技力って深まるんだなぁ。
トップお披露目作品だったんですね。
コムさんもこのとき既にお芝居お上手だけど、初演のイシさんの独特な言い回し、声の音程? がちょいちょい覗いて、
「おいおい新公じゃないんだからw」
ってなる。けどずっと近くで見てた人だし、影響濃厚なんだろうなぁ。
あと、歌の音程が、やっぱりイシさんに合わせた音程だなーと思った。
宝塚って本当に、そのときの主演者、トップスターに合わせて全てが決まっていく世界なんだなぁ。
OP、後ろで踊ってる花嫁ズの中に美穂姐いるwww
本当にこの頃の雪組豪華だなww
まぁ宝塚が豪華じゃなかった時代なんてないですけど(真顔)
まーちゃんのサンドリーヌは本気で頭良さそうですね。
あと、見た目が大人っぽいので、お局様っぽい……w
グン様のサンドリーヌは「ダサ可愛い」だったけど、まーちゃんのサンドリーヌは可愛いおばあちゃんみたいなおちゃめさがある。
振り切ったやりすぎ感が、いっそ豪華さを感じさせるほど。
「金の切れ目が縁の切れ目」ソングでも美穂姐が出てきて、どピンクミニワンピに黒ライダースがカッコよすぎるので未見の方は是非……。
そして「ちょちょくりあう」とは……すみコーをギリギリかいくぐる動詞を作ったつもりかな……?(⌒▽⌒)
ホテル・モンテカルロの歌はすごく好きです……。
可愛いし、曲調もすごく好き。
ラストでもう1回聴けて嬉しかったー。
五峰姐さんがジェラールのお父さんの後妻なの笑ったwww
前これ観てるはずなんだけどな……?(⌒▽⌒)
「顔と肉体に惚れて結婚した」の台詞の説得力ものすごいよ……。
コムかしげハマコの悪ノリ感すごいwww
コムさんも美形の例に漏れず、石田コメディ好きよね、たぶん。
あと、ダーイシの悪ノリする脚本演出は、たぶん雪組のEテレ的狂気を帯びた気風に合っている……w
ちぎみゆにも一作書いてくださいヨ~
細かいとこ気になっちゃったんだけど、モナコって火葬なのかな?
キリスト教って土葬基本よね。けどモナコは面積少ないもんな~、どうなんだろう!
全身ピンクのスーツのジェラール&黄緑のドレスのサンドリーヌが踊るところ、色合いが可愛くてきれい。
ジェラールがサンドリーヌに本気で恋をしている描写、作品の中でも要になるハイライトのシーンにふさわしい気合を感じた。
サンドリーヌのお衣装がどれも素敵なんだなー。
クラブの赤黒ドレスも、ものすごく色っぽくてきれい。
こういうのが似合うんだね、まーちゃんって!
本気の恋に困惑するコムさん、生々しい男の弱さがあって、どんどんリアリティさを増していく……。
お芝居のコムさん好きだー。
冒頭でかしげハマコがジェラールにキスして嫌がられたのを、ラストでジェラールから2人にキスするシーンを作ることで、反復しつつ回収するの上手いなーw
雪組『ワンダーランド』全ツ
◆OP
まーちゃんも耽美なんだなーって思った……何となく。
立て続けにコムさん主演作を観てるせいかもしれないけど、なんだか最近まーちゃんへの愛が深まっているのだ。
◆白鯨へのレクイエム
ミズさん海似合ってるなーwwww
ホテルステラマリスでもサーファーだったからね!
海の白い悪魔~♪ って延々繰り返すコーラスがやたらインパクトある。
◆士官?とインディアンの娘
この場面、明るく始まる割に悲劇で終わるの、フェイントひどいと思う……。
さっきの白鯨といい、ショーの前半に死が関わるネタが集まってるな??
◆中詰め
きんせしシンメでスタート。
この時代生で観てた人たちは、こないだの2人揃っての卒業、思うところ多かったろうなぁ……。
中詰めのクラシック名曲替え歌メドレーは結構好きですw
中詰めにしては盛り上がりに欠けるし、歌詞別に冴えてる訳ではないけれど。選曲が。
◆アラビア
中東ものはやはりどんどんお芝居にしたりショーの場面として積極的に取り入れていくべき……宝塚の持ち味である色気、妖艶さ、美麗さが引き立つ……。
この場面の目玉はせしちゃんの女装。
化粧も表情も男役のまんまで、あんまり女に見せる気ないやろってせしちゃんw
えりたんの女装にも似てる。
この人が10年目で娘役転向して、雪組の娘2張るなんて、この当時誰も想像できなかっただろうな~。
せっかく世界観に浸ってたのに記念撮影でオチを付けてしまったのは何だろう、照れ隠しかな……w
◆栄光
グローリー・ハレルヤをやたらねちっこく歌い、長い手脚で軽快に踊るトップスターw
いやしかし本当にコムさんは、見た目も踊りも歌もお芝居も全てが素晴らしくてすごい。
宝塚をモデルにしたフィクションに出てくる、架空のトップスターみたいな人だ……。
ハマコさんは本当に歌が上手いな! 1人だけクオリティがずば抜けている。
娘役さんの黒いキャミワンピ、裏地が真っ赤なのカッコいい。
まーちゃんだけドレスじゃなくてオールインワンのパンツスタイルなんだなぁ。
ここでも娘1にカッコいいことをさせたがる三木先生……まーちゃんは面長で大人っぽい顔立ちだから似合ってて良かったけど……。
◆フィナーレ
さっき中詰めだったのにもう終わった……体感時間短いなー……。
テルさんとかきんぐが客席降りしてて、豪華……みんなこんな時期を経てきてるんだなぁ。
紺ベースに銀の模様が縦に入ってるデュエダンお衣装、とても素敵。
えりあゆにも着てほしかった……。←
しかしデュエダンの尺はめっちゃ短くて、すぐ男役群舞に入る。
オラオラ系のノリノリな振り、三木先生っぽい!
そして出た! 娘1エトワール。
これのためにデュエダンはあっさり終わったんだな。
娘1エトワール、ここ数年目につくようになっていろいろ言われてるけど、今に始まったことじゃないんだな~。
しかしみりおんは続きすぎている……。
驚いたのは、フィナーレで客席降りしてること!
大盤振る舞い!!
雪組『銀の狼』全ツ
初演に比べてハコが小さい分、小劇場作品っぽくなっていて、より本来あるべき姿、描かれたものの本質に近づきやすくなっている印象がある。
コムミズ2人とも正塚役者というのも相まって、台詞や歌詞も耳に入りやすい気がする。
(正塚先生の作品が中日や全ツの常連なのは、こういう理由もあるのかもしれない?)
OPは少人数になって、迫力は減ったものの、どういう訳か不気味さが増している。
雪組子の気合だろうか……。
コムさんシルバは「男」度合がものすごく高い。
死の天使のようだったかなめさんに対して、まさに「狼」の切れ味。
漠然とした不安にまとわりつかれているかなめシルバと、失われた過去をアグレッシブに求めさまようコムシルバ、という感じ。
かなめさんのために書かれた物語だとわかっているけれど、コムさんの冷たい刃物のような輝きは、作品の世界観にガッチリハマってるなぁと思う。
まぁしかしシルバのメイクをしたコムさんのお顔の美しいこと。
こんな美しい人が生身の肉体をまとって実在していることにも驚きだし、素顔のほわほわさを知った上で見ると、そのギャップに世界を疑う……。
ミレイユはそもそもが翳を背負った役だけど(娘1がこんなキャラクターなの本当珍しい)、まーちゃんのミレイユは初演の麻乃佳世さんと比べても、明度がめっちゃ低い。
この物語は等しい暗さの闇を抱えた者同士であるゆえに惹かれあうシルバとミレイユの物語だから、闇がより強く濃いコムシルバと同じ暗さの闇を、まーちゃんミレイユもまとったということなのかもしれない。
レイとの友情? 絆? も、コムミズの方が強く精細を放って見える。
コムミズはやおいだけど、かなめゆりは百合だったな……って思った(伝われ)。
ミレイユを連れての逃亡。
「幸せなどはるか昔に奪われた」と共に歌うシルバとミレイユ。
レイに対して語った「同じ理由を持った人間と気持ちが通う 同情じゃなく、な」の台詞がここで活きてくる。
違う場面だけど、ミレイユも「命の理由も見つからぬままに」の歌を歌っていて、本当にこの2人は「同じ理由」を持ち「気持ちが通う」2人なんだな……と……。
あとこのシーンのバロックな刺繍がされた革ジャケットカッコいいよねw
怪我の手当てをさせてくれた農家のセットは、かなりシンプリファイされて、かえってわかりやすくなっている。
やっぱりと言ったらアレだけど、正塚先生って中日や全ツ用にセットを「削る」のが上手い。
ケイさんのジャンルイは、爬虫類的な気持ち悪さがあるw
「私が愛していたことを知っていたか?」のまとわりつき方とか……ノンさんのはDV男っぽい、力で圧する感じだったのに……w 持ち味ってあるんだねーww
追い詰められたミレイユが思わずシルバの名前を呼ぶの、「恋だね!」ってテンション上がった。
笑顔一つなく、押し殺した会話をするばかりの2人だったけど、一緒に森を歩いたり手当てを受ける中で、確実に想いは生まれ深まっていったのだな……。
記憶を取り戻して、妻子の墓参りをするシーンの台詞も奮っている。
「自分で死ねばたかが一つの命だ。
だが死なれてみれば想いはとめどない」
正塚作品アワードやったら、脚本賞は間違いなく『銀の狼』なのでは!? ってくらい、脚本の完成度が高い……! どうしちゃったの、正塚先生w
シルバを「始末」しに来たレイは、ミレイユの撃った銃弾に斃れる。
ここで、ミレイユもシルバと同じ、人殺しの咎を負うことになるのがすごい。
2人がこれから共に歩いていくために必要な「儀式」だったようにも読める。
一方、シルバの本当の名は「ミシェル」。
大天使ミカエルのフランス語読みだ。
刑事トランティニヤンが叫んだ通り、銀の狼は死に、大天使の名を持って生まれ変わった……というのはうがちすぎだろうか。
「朽ち果てるまで俺は生きる。そして君を守る」
「朽ち果てるまで……」
なんだかこうやって、2人のやりとりの軌跡を追っていると、この物語がものすごく深く熱を持ったラブストーリーみたいに見えてきた。
(実際そういう意図で描かれているんだろう。)
ラスト、後ろ姿の2人に黒い紗が掛かってから、ミレイユがミシェルに寄りかかる演出はやはり最&高。
ナウオンでコムさんが述べた「永遠に草原に生えてる2本の木のような2人よね」というコメントは、この2人の有り様を的確にわかりやすく喩えていると思う。
奪われた幸福は戻ってこないけれど、これから2人で歩いていく。
深い森を、あるいは暗い荒野を。
その道程の中で、笑顔を交わすようにもなるかもしれない。
これまた雪組生本当に芝居上手いな! とうなってしまうクオリティなんだけど、特筆すべきはシモーヌのきゃびぃかと。
めっうま!!! やっぱり彼女のお芝居のセンス、過剰すぎないさじ加減は素晴らしいですね。
シルバへの執着の粘度と湿度が高めの、ウザ可愛いシモーヌです。
月組『エドワード8世』
敢えてこのタイミングで……という訳ではないんですが、なんかここ数日きりまりがマイブームなんですわ。
組子をだいぶ知ってから観ると見えるものが全然変わりますね。
まゆぽんこのときから場面の要、幕開けを飾るになる役やってるのすごいな。
アステア姉弟がとしちゃぴだ!
一樹千尋さんのチャーチルはサマになりすぎてて笑うしかないwwwww
そしてたまきさんはこの頃から、トップ娘役を脅すという大役を務めていたんだね……抜擢に応え続けてきたたまきさんカッコいいよ……。
今まであまり意識したことなかったんだけど(すみません)、もりえさんもお芝居上手いな……!
「チャラく見えるけど情に厚い人柄」という「見た目と中身の違い」をちゃんと演じていて、演じ方に温もりがある。
2014年の100周年記念式典では、3日間に渡ってOGの皆さんがそれぞれの代表曲を歌った。
1日目の1曲めはきりやんの「退位の歌」だった。
それについてトップスターを「退位」した人たちのイベントだからぴったりだと仰っていた方がいた。
なるほどなぁと思ったのだが、見返してみて、この作品における「国王」を「トップスター」と読み替えると、あまりのアイロニカルさに震えた。
その読み替えをしなくても物語として楽しめる仕掛けにはなっているのだが、自らの大劇場デビューに宇治十帖を選んだ大野くんのこと、明確に意図してのことだろう。
国民が愛しているのはプリンス・チャーミングという「イメージ」、本当の自分のことは誰も見ていないと嘆き、「何か物足りていない様子」のデイヴィッド。
OPにも使われた、牢屋のような柵に囲まれた王座は、彼が置かれている立場の象徴だ。
英国民ではないウォリスだけが、彼を一人の人間として接し、それゆえにデイヴィッドは彼女に惹かれていく。
「プリンス・チャーミングでなくなったとき私に何が残るのか。」
ぼやいていたデイヴィッドは、その答えをウォリスに見出した。
どんなトップスターにも、それぞれの「ウォリス」が現れると良い。
そんな祈りや願いすら感じる筋立てだ。
きりまりにそういうエピソードがあったと聞いたことはないのだけれど、何でも出来る「優等生路線スター」で、それゆえ宝塚ではちょっと異質だったきりやんが、他の組から来て、同じ強さで並び立って歩けるまりもと出逢えた「ドラマ」は、デイヴィッドとウォリスの物語にカチリとハマる。
「主演男役とその引き立て役」ではなく、同じ一人の人間同士として並び立つきりまりは、さながら男女バディ。
デイヴィッドとウォリスのキャラクターも2人の持ち味にとても合っていて、サヨナラ公演にふさわしい「究極のきりまり」に仕上がっている。大野先生ありがとう……。
(しかし、意外とまりも氏に「強い女」系の役が回ってきたのは、サヨナラ公演のこれとお披露目のスカピンくらいなのかな? ジプ男未見なのでわからないが。)
この時代のイギリスは国王や首相自らラジオに出演していたようで、デイヴィッドはより自分の声がストレートに伝わる、用意された原稿であっても本音を隠せない気がすると、ラジオを愛していた。
ラジオはこの作品の演出において、幕開けから終劇まで、象徴的に繰り返し使われる。
OPで死後のデイヴィッドがウォリスに声を届けるものとして、アメリカミュージカル「ジュビリー」のアイロニックな楽曲を流し、ワルツばかりで退屈な父王のジュビリーを打ち破るものとして、そして、退位を宣言するものとして。
(一方で、同じ報道メディアでも、雑誌や新聞はスキャンダルを書き立てるものとして悪しざまに扱っていて、対比が活きている。う、上手い……。)
いやー、前田慶次もだったけど、すごくよく出来てるな~!
大野先生の作品はどれもノンストレスで観られるわ。
NOBUNAGAも楽しみだぜ
ところで、いきなりチャイナ着てセンターから出てくるまさおちゃん面白すぎるだろ。
NOBUNAGA楽しみすぎる