星組『1914/愛』
タイトルが第一次大戦開戦の年だったんで、もっと陰気で重苦しい政治色強い近代歴史モノを想像していたんですが、ハッピーラブコメディでした! 良かった!w
と言っても、ちゃんと大戦の足音が忍び寄る、不穏な空気は描かれているのですけれど、主人公たちが前向きに明るく「何があってもパリを/居場所を守るぞ!」と決意する様が描かれているので、とても爽やかな気持ちで見終えることができます。
舞台は1910年代のパリ・モンマルトル。
わたるさん演じる主人公は、ロートレックの描いたポスターでお馴染み、「炎の詩人」アリスティド・ブリュアン。
赤と黒のボリューミィなお衣装に堂々たる体躯が、まさにポスターから抜け出てきたようで、前知識が無くても「あっ、もしかしてロートレックのあのポスターの人か」とわかります。
前向きな力強さがわたるさんにぴったり。
ヒロインの檀さまは、オペラ歌手を目指す貧しい女性。
謎の侯爵夫人を演じ、わたるさんのお店に出入りしては、貧しい画家たちにパトロンを紹介しています。
(オペラ歌手を目指しているという設定にもかかわらず歌うシーンは無く、しかもそれがストーリー上何らの支障も生じていないのが、谷先生の配慮というか何というか)
両想いなのに互いに身分を偽りあい、そのことに引け目を感じてなかなか前に踏み出せない2人の恋が、もどかしいけど可愛い。
身分にとらわれない互いの芯の部分を愛していることを確認し結ばれる描写も、ドラマチック&ロマンチックです。
脇を固める芸術家陣も見どころ満載。
アパルトマン「洗濯板」の面々ですかね。(モンマルトルのトキワ荘みたいなところ)
他己紹介ソング面白かったです。
特出のかしげ氏が演じるのは、マリー・ローランサンとの恋愛、失恋を経て、最後に「ある選択」をする詩人のアポリネール。
兼業詩人で芸術家の中では経済的に安定していて、仕草も服装も品が良く、まさに「王子様」かしげ氏にぴったり。
同じく特出のタニさんが演じるのはモディリアーニ。
口は悪いけど情は厚くて、魅力的なキャラクター。
実際に浮名を流しまくった伊達男なので、納得のキャスティング。
女性関係の部分は描かれていませんでしたが。
まとぶん演じるユトリロは、アルコールにどんどん体を蝕まれていく様が描かれ、暗くなっていくパリの街とリンクします。
戦争の影響や、海外での個展のオファー等で仲間たちはバラバラになりますが、それでも互いの未来や芸術のために頑張ろう! と明るく互いの背を押します。
作中では描かれていませんでしたが、この時期を境に、モンマルトルは観光地化・高級住宅街化して、芸術家たちはこの街を離れていったみたいですね。
西洋美術クラスタ出身なので、おなじみの画家たちが出てくるだけで面白かったです。
ラブストーリーとしてもこそばゆくて可愛い。
ちょっと娘役たちの金切り声が多く、聞いててストレスになるきらいはありましたが。
カンカンの場面はあれかね、ちえさんの足上げと回転をお見せするためのパートだったのかね。