星組『コインブラ物語』
ハッピーエンドじゃないんかい!!!
こんだけ外堀が埋まってるのに!
愛の障害と思われていた事象がことごとく自ら去ったり自滅したりしてくれてるのに!?
内側から崩しに掛かったよ!! つらい! 気の毒だ!
これペドロがイネスを何ヶ月(何年?)もほったらかさずに、忍んででも逢瀬をきちんと重ねていたら、イネスの心がそっちに傾くことはなかったのでは……? と思ってしまうな……。
人は独りにすると冷静かつネガティブな方向に考えが進んでしまうのだ……。
恋の熱のテンションを保ったまま勢いで推し進めば良かったのだ……。
とはいえめでたく2人きり駆け落ちに出るとよわんこの主従カップルも、あの後幸せになれるのかなっていうとそんな予感もせず。
ずっと王女として苦労無く育てられてきた子が、好いた男と一緒とはいえ、故郷から遠く離れた異文化圏で地位も身分も財産も無く暮らせるかというと、うーん……。
って考えると、イネスの決断は確かに賢明で現実的なんだよなぁ。
けど宝塚的ではないんだよたぶん……。
そしてこの作品、演出が澄夫ちゃんで古風な古き良き宝塚だからその流れに違和感があるんだよ……。
とよわんこがめでたしめでたしで終わってる分、余計にね……。
愛短は正塚センセーの現代的な演出だし、ヒロイン自身がハッピーエンドを断る理由がきちんと語っていて、そこに説得力もあったからすんなり悲恋として受け入れられたのだけれど……。
演者はすごく良いんだけどね!
若さと勢いと激しさのあるイシさんとか、もうひょっとしたらこれっきり観られないかもしれないし、月娘1が決まっていたまりもの、美しく輝いていること!
まりもの一人二役も上手いし面白いんだよな。歌い方まで変えてるのすごい。
(しかしあの「二役」の方がイキイキしててハマっててインパクトあるのがまた話の流れを乱してしまっているのだ……。)
公平先生原案の作品って愛短とこれしか拝見してないんだけど、この身分差による悲恋とか、その気になればハッピーエンドにできたのに登場人物が自分の意志でしないって共通項が、どうしても気になってしまうね……。