ヅカ式宝塚鑑賞日記

小並感千本ノック

雪組『春ふたたび』03バウ・えりたん

宝塚歌劇 公演案内

 

植爺による1幕ものの脚本を、各組の若手スター主演で、若手演出家が演出する……というバウ・ワークショップの中の1作。

植爺の作品限定ってのがどないやねんと思わないでもないけど、見た限り「春ふたたび」も「おーい春風さん」も起承転結がすっきりはっきりしていて、場面転換も無くて、出演者・演出家が演技に集中できるという点では良いチョイスだったのかも。

出演者・演出家にとって、日本ものの訓練にもなったろうし……。

 

当時の批評とか見ると、脚本以外は各演出家にお任せって感じだったみたいですね。

オープニングをレビュー風にするだとか、エンディングの場面を創作するだとか。

 

で、えりたん&大野先生の『春ふたたび』です。

主演10人×演出家10人の組み合わせでお互いを引く、この引きの強さというかご縁の深さというか……w

確かえりたんが大野先生に「娑婆気がある」って注意されたのってこれじゃなかったっけ。

ご指導の甲斐あってか、全く娑婆気のない、ロイヤルな道忠様でございました。

 

ストーリーは至ってシンプル。

幼い頃に母親と生き別れた男性が、京で出世し、故郷と母恋しさに、領主として地元に着任、母親を探しだすという物語。

主演の領主・道忠と、母親「やす」がお芝居の中心になります。

えりたん版では、やす役は専科の高ひづるさん。

 

ラブロマンスは特に無く、明確なヒロインも不在。

たぶん、初演の頃はラブロマンスが必須項目じゃなかった時代だったんでしょうね。

 

植爺なので脚本がクドい。

「それさっきも聞いたから!!」っていう、同じ内容の台詞の繰り返しが何度もされる。

なんですけど、えりたんが出てきた途端、そこが植爺ワールドとして正規化されるというか、台詞のクドさが気にならなくなるんだよな~w 不思議w

悔しいけどやっぱりえりたんって植爺役者なんだよな……(⌒▽⌒)

 

んで、えりたんのさらに上手いところって、植爺ワールドに馴染んだと見せかけて、その形式ばったクドさの中に、生きた人の感情を込められるところなんですよね。

高ひづるさんも同じタイプに見えた。

中心になる2人のベクトルが同じだから、すんなり「泣かせる芝居」として受け入れることができたな~。

 

やすは子どもを売った罪悪感から、なかなか道忠を自分の息子と認めようとはしなくて、一度場はお開きになります。

が、よよよと泣くやすの背後から、雅さを脱ぎ捨て「息子」の顔に戻った道忠が再登場し、親子の対面大団円となります。

この切り替えもえりたん上手い。

 

最後は、やすが道忠の母親だと特定するきっかけになった地元の踊りを皆で歌い踊って幕。

下級生で可愛い時代のえりたんが観られただけでなく、観た後もさわやかな気分になれる作品でした。