雪組『ローマの休日』
ご縁に恵まれ、観ることができました……!
何気に田渕先生の作品を生で観るのは初めてでした。
光と影の使い方が上手いですね。
影と光と言うべきか。
暗い中に明かりを使って、観客の視線を誘導したり、登場人物の心情を表すのが上手い。
映像の使い方もお上手。
映像使うと、セット転換しなくて良いから、展開もテンポよくなりますね。
(けどやっぱり経費削減感は否めないな~……。
90年代の「金掛かってるゥ!」てセット観ちゃうと余計に)
あと「ミュージカル音楽」としての音楽の使い方が上手いですよね。
「心情高まってきたぞ~!」ってタイミングで、ミュージカルらしいナンバーが入る。
流れの見事さはイケコを彷彿とさせた。
ちぎみゆは今回も、実にちぎみゆであった……!
ちぎみゆが演じると、どんな作品もしっかりラブストーリーになる気がする。
ちぎちゃんの鋭角な少年っぽさと、みゆのまろやかな少女っぽさ。
みゆの圧倒的なヒロインとしての存在感、
「この子が主役の男が好きになる女の子だ!」
と、舞台袖から現れただけでわかる佇まいも、世界を明確にラブロマンスにする力になっているよなぁ。
原作はオードリー・ヘップバーン主演でおなじみのあの映画です。
かつてオードリーの役を演じたタカラジェンヌといえば『麗しのサブリナ』の蘭ちゃん。
蘭ちゃんは細身で吊り目という元のルックスもあって、かなりオードリーに寄せた見た目に仕上げていましたが、みゆはオードリーに寄せるよりも、自分の持ち味を活かす方向にした感じ。
だんだん恋に落ちていくちぎみゆ。
若い恋人同士のように笑い合うちぎみゆ。
思いが強くなるごとに、互いに嘘をついていることの罪悪感に胸を痛めるちぎみゆ。
王女の急病(だと世間には広報されているのです)により国民に不安が拡がっているというラジオのニュースが、楽しい時間にピリオドを打つのは、良い演出ですね……。
アンは1日だけ王女の座から逃げ出したけど、ずっとそうしてるつもりじゃないし、このシーンは、自分が未来の国家君主であることを、彼女が強く自覚するシーンでもあるんですよね。
翌日の記者会見で、互いに初対面のような振りをしながら、お互いにしかわからない会話を交わすシーン、たまらない。
あれは演技力のあるちぎみゆならではですね。
二人ともこれからそれぞれの人生が続いていく。きっとそれぞれ伴侶も得る。
だけど、一生忘れない、ローマの休日。
原作の映画を観たことが無いので、どこまでが原作のものでどこからが田渕先生のオリジナルかわかんないですが、ほとんどドタバタラブコメディです。
演目発表時は「役が少ないのでは……?」と懸念されていましたが、濃い脇役がたくさんいて、男役2番手のアーヴィング(今日は翔ちゃんでした)だけでなく、大ちゃん・まなはる・かなとくんにもセンターソロがありました。
「脇芝居」もたくさんあって、雪組生の上手さをまたしても堪能。
田渕先生の愛だな~。
男役3番手のマリオ(今日はかなとくんでした)はスペインかぶれのイタリア男美容師という役で、かなりはっちゃけた三枚目です。
シャルウィのドニーさんみたいな感じ。
今まで正統派二枚目貴公子として育てられてきたかなとくんに、このタイミングでこういう役が来て良かったなぁ、と思いました。
素顔はひょうきんな子だし、そういう役を舞台で演じることで得るものも多いのでは?
はー、素敵な時間でした。行けて良かった!