雪組『春櫻賦』
和物ショーがやりたかったのかな……?(^ν^)と疑ってしまうほど、舞踊パートがお見事な……お芝居(^ν^)
薩摩による琉球支配が発端になるお話です。
イシさん演じる琉球の若者が、人質となった家族を追って日本(大和国)に入ります。
薩摩藩に国を奪われ、父を殺され、大和国に憎しみを抱いていたけれど、かくまってくれた女歌舞伎の一座の面々や、行く先々で出逢った人々との触れ合いで、徐々にそれが薄れていくイシさん。
家族と再会を果たしますが、そちらはそちらで関係性を築いていて、結局家族は再結成とならずに、それぞれのコミュニティで生き続けていくことを選ぶんですね。
イシさんも、女歌舞伎座のトップスター・グンちゃんと2人で旅に出ることになり、幕。
日本の南端から北上し、桜前線と一緒に移動してきたという設定のお話。
イシさん演じる主人公が、ずっと咲いていたはずなのに気づかなかったな、と頭上の桜を見上げ、憎しみから解き放たれて余裕が生まれたことを示すシーンが見せ場でしょうか。
とまぁ、全体として良い話ではあるんですが、主人公が旅の目的、生きる目的を失っていく過程の物語でもあるんですね。
キャラがだんだんぼやけていくというか。
最後の「新しい旅に出る」というのも、特に目的があるとかではなく、
「この人これからどうなっちゃうんだろう……?」
という無駄な心配を煽られてしまい、すんなりと「良い結末だったな……」とか「素敵な主人公だったな……」と受け入れづらいです。
グンちゃんとのロマンスががっつりあるかっつーと、そういう訳でもなし。
グンちゃんがいつしか片想いしていたという「設定」なんですね。あくまで設定。
2人の間に明確で具体的なラブいやりとりが交わされるのは、最後のシーンだけです。
しかも、グンちゃん可愛いんですが、若干テンションが高すぎて、ウザい。
ウザ可愛いとのギリギリのラインを行っている感じ。
これ谷先生のご指定のテンションなのかなー。谷先生の女性観疑ってしまうなー。
むしろ脇の男役陣の方が美味しい役どころをもらっている感が。
薩摩の若武者を演じるタータン。
それまで藩に全てを捧げて生きてきていたのですが、イシさん演じる主人公と出逢い、刀を交え、自分の人生に目覚めます。
この人は明確に自分の人生を手に入れた感じ。主人公と対称の歩みをするのだなぁ。
白か黒かで言ったら敵方の人間なんだけど、真面目だし剣の腕もあるし二枚目だし(今までみたタータンの中でなぜか一番若く見える)、キャラクター人気投票でうっかり主人公を上回ってしまいそうなタイプ。
女歌舞伎の座長を演じる汐風幸さん。
やはりと言うべきか、この方は日本もの化粧のときが一番美しく映えますね。
チャラチャラ享楽的に生きているんですが、イシタータン両方カタブツという登場人物たちの中で、ある意味最も大人で真っ当な人物に見えます。
爽やかで暖かい初夏の風のような役作り。
白眉は汐美真帆氏演じる、旅芸人一座の傀儡師・美濃では。
寡黙で渋い、けど心優しく弱きを助ける、男前。
まひる氏演じる主人公の妹をかばってくれるんです。
それでまひる氏もまんまと好きになってしまう。
いやこれは好きになりますわ……!
汐美真帆氏、今まで見た作品の中でも何度かお見かけしてるはずなんだけど、こんなに意識したの初めてでちょっと動揺しています。
これからはちゃんとチェックしよう……。
しかし、マヤさんだけがゴリゴリの薩摩弁で、他の登場人物は琉球チームも薩摩チームも皆標準語なのは、誰も何も違和感を抱かなかったのか。私が現場にいたら止めるぞ。
あっ、冒頭でも述べましたけど、ダンスシーンは本当に見事なんで!
桜のボレロとかね! 植爺作品かな? って一瞬見間違えちゃいそうになるけどね!!